「エリン・ブロコビッチ」 2000年/アメリカ/2時間11分
自己評価ランキング A
元ミス・ウィチタ、独身、離婚歴2回、3人の子持ち、無学、無職、預金残高16ドル。こんな彼女が、大企業相手に環境汚染を暴き立て、とてつもない和解金(日本円に換算すると350億円)を勝ち取ります。その不屈の精神と意志は、不可能と思われる困難の壁を打ち砕き、奇蹟的な勝利を掴みとります。これは、実際にあった真実をもとに、映画化したものです。それだけに、鑑賞した者にとっては、感動だけでなく、元気づけられ、消沈した心にやる気を与えてくれます。男性の私が観て、興奮したぐらいですから、ジュリア・ロバーツの演じる、エリン・ブロコビッチに共感し、励まされた女性も、数多くいることでしょう。
お金も職もない女性、エリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ)は、自分の交通事故をきっかけに知り合った弁護士(アルバート・フィニー)を頼り、かろうじて職を得ます。彼女は、整理していた不動産関係のファイルに、ふと疑問を抱き、調査を始めます。そしてある地域の住民たちの間に、致命的な病気を引き起こしている、水質汚染を発見し、大企業が住民をだましていることに気がつきます。最初は、関わり合いになることを嫌がっていた住民たちも、エリンの粘り強い説得や、決して他人事ではない気持ちから行動している彼女の姿をみて、徐々に耳を傾け始めます。やがて、彼女は住民たちに受け容れられ、信頼を得るようになります。その彼女の心の支えになっているのは、3人の子供と、隣人のジョージ(アーロン・エッカート)。ハーレー・ダビッドソンを乗りまわす彼の協力により、彼女は、より事件に時間を割くことができました。彼女は、一軒々々を訪問し、600人を超える原告を集めます。そして、エリンとエドは、全米史上最高の和解金、3億3千3百万ドルを勝ち取ることに成功するのです。
なんといっても、エリン・ブロコビッチ役に、ジュリア・ロバーツを起用したのは、大成功でした。ハリウッドにおいて最も出演料の高い女優ということだけはあって、演技力には申し分ありませんでした。
映画鑑賞後、なによりも驚いたのは、パンフレットを読んだときのことです。実は、作品の中に、本物のエリン・ブロコビッチが出演していたというのです。ファミリーレストランで、オーダーをとっているウェイトレスが、その本人だというのです。…と後から知っても、彼女の顔をよく覚えていないだけに、大変、ショックでした。なんでも、そのウェイトレスの名札には、“ジュリア”と書いてあるとか。エリン・ブロコビッチを演じるジュリア・ロバーツと、ウェイトレスのジュリアを演じるエリン・ブロコビッチ。このワンカットだけでも、もう一度、観直したいくらいです。これから、「エリン・ブロコビッチ」を鑑賞する人は、このことを知っていると、とてもお得な気分を味わえると思います。
「エリン・ブロコビッチ」は、感動と興奮を贅沢に味わえる作品です。作品の中で、エリンは、634人の原告のことを、誰よりも知っているのは自分だと言ったために、それを聞いた相手の女性は、その言葉を挑戦ととり、634人の中から、適当に選んだ原告の電話番号を答えてみろ、と詰め寄ります。しかし、エリンは臆することなく、相手の選んだ原告の電話番号を言い当てるどころか、更には、家族構成や病気の症状といった、聞かれてもいないことを、次々に言い当てていくところは、鳥肌がたつくらいに興奮しました。
また、エリンを支えていた、隣人のジョージの存在も、無視できません。一見、無法者に見えるこの男性も、実は、大変、子供の面倒見がよく、彼の存在のおかげで、エリンは、仕事に集中できたのです。エリンは、これまでに2度の離婚を経験しています。でも、その相手の男性とジョージと大きく異なるのは、エリンの気持ちを理解できる包容力にありました。エリンは、あなたにはここに居てほしいと、自分の気持ちをジョージに明かします。しかし、ジョージは、エリンに渡そうとしていた婚約指輪を見つめながら、こう答えます。「この婚約指輪を買ったのは、もう6ヶ月も前のことなんだ。でも、君に、これを受け取ってもらう時間は、これまでに無かった。君の中に俺はいるのか? 俺はどうしたらいいんだ?」 しかし、ジョージは、エリンの良き理解者でした。一旦は、エリンの住む家からは出ていったものの、最後には、エリンを再び、受け容れるのです。エリンは、そのことをすごく感謝し、ジョージに、そのお礼をしなければならないと考えました。
ある日のこと、エリンは、ジョージを誘い、一軒の家を訪ねます。その家では、奥さんが子宮癌によって、女性にとって大切な子宮を失うという手術を受けました。もう、子供を産むことは出来ない体なのです。そうなったのも、全て、水質汚染の影響によるものでした。そのことを知っていたエリンは、そんな彼女に、和解金を勝ち取ったことを、誰よりも先に告げることにしたのです。彼女に分配される金額は、実に500万ドル(…だったと思います。違っていたら、ごめんなさい)。日本円に換算して約5億円。「とても、そんな数字、ぴんとこない」といって、泣き崩れて喜ぶ奥さんの姿をみて、ジョージは、これまでずっとエリンを支えてきたことを、誇りに思い、またエリンは、改めて、ジョージに感謝の気持ちを表すのでした。とても、感動的なシーンです。涙をこらえるのに、大変、苦労しました。
最後に、「ショムニ」というドラマでもご存知のように、この作品は、観終わった人を活気付ける要素が充分にあります。最近は、癒しという言葉を多く聞きます。しかし、癒しは、マイナスになった心理状態を、平常に戻すまでの効果しかありません。その点、「エリン・ブロコビッチ」は、ただ癒すのではなく、むしろ、プラス効果を生み出す栄養価の高い作品であると感じました。是非、意気消沈している女性に、オススメの作品です。
監督 スティーブン・ソダーバーグ キャスト ジュリア・ロバーツ エリン・ブロッコビッチ アルバート・フィニー エド・マスリー アーロン・エッカート ジョージ マージ・ヘルゲンバーガー ダナ・ジェンセン チェリー・ジョーンズ パメラ・ダンカン ピーター・コヨーテ カート・ポッター スコッティ・レブンワース マシュー ジェミーン・デ・ラ・ぺニャ ケイティ
参考
・株式会社インプレス MOVIE Watch
・「エリン・ブロコビッチ」公式サイト
・「エリン・ブロコビッチ」パンフレット