「マトリックス」 1999年/アメリカ/2時間16分
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《ストーリー》
 コンピュータプログラマーとしてニューヨークの企業で働くネオ(キアヌ・リーブス)。 凄腕のハッカーという顔も持っている彼は、最近“起きてもまだ夢を見ているような感覚”に悩まされていた。

 ある日、自宅のパソコンのモニター画面に、不思議な文字列が浮かび上がる。「起きろ、ネオ」「マトリックスが見ている」「白ウサギの後をついていけ」…。正体不明の美女、トリニティ(キャリー=アン・モス)に導かれて、ネオはモーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)という男と出会う。彼に見せられた世界の真実の姿は、驚くべきものだった。今は1999年ではなく、2199年ごろ。人間たちが“現実”だと思っているのは、「マトリックス」と呼ばれる仮想現実。実際には、人々はバイオメカニカルな“発電所”で羊水のような液体の中に浮かび、コンピューターによって“栽培”されている。自分の足で立つことも、自分の目でものを見ることもなく‥‥。

 そう、この世界は、コンピューターによって脳に送られた電気的な刺激が作り出した、スーパーリアルな幻なのだ。21世紀の初め、A.I.(人工知能)が単一の意識を持つようになり、自分たちが主導権を握ろうと反乱を起こした。当時、コンピューターは太陽エネルギーを動力源としていたため、人類は太陽光を人工的に遮るという対抗手段に出た。戦いに勝ったコンピューターが、新たな動力源として選んだのは人間だった。人間を計画的に“生産”し、その身体が吐き出す熱を動力源とすることにしたのだ。その事実を知り、A.I.による支配と戦っている少数の人間たちは、長い間、予言者が語った人物の出現を待ち望んでいた。そしてネオが選ばれた。この世を人間の手に取り戻すことのできる“救世主”として…。

 はたして自分は本当に救世主なのか? 確信が持てないまま、ネオはコンピューターの中枢に直結した監視プログラムであるエージェント・スミス(ヒューゴ・ウィービング)との戦いに参加する。スミスにはすべてが可能だ。驚異的なスピードと力を持ち「マトリックス」の中の誰にでもなりかわれる。そんな敵に対抗できる手段とはいったい何なのか。救世主であるためには、何をなせばいいのか? 戸惑うネオにモーフィアスは言う。「既成概念を捨てろ。心を解き放て。心が仮想現実を現実にするのだ」と。

 人類の命運を賭けた壮絶な戦いが、いま始まろうとしていた…。

《ストーリー》は、「マトリックス」の公式サイトから、無断転載しております。

 「もう1度、観たい」と、素直に思った。これまで、80本余りの映画を鑑賞してきた中でも、斬新なアクションとSFの世界観に魅了される1本となった。今までも、数々のSF映画では、独特の未来を映像化し、観客を魅了してきたが、「マトリックス」のような未来観には、初めて出会った。何より、カンフーを取り入れたアクションシーンに圧倒した。まるで、「ドラゴンボール」のような、目にも留まらぬ動き。作品に、ジャパニメーション(和製アニメーションのこと)も取り入れたというだけのことはある。昔から、ジャパニメーションが実写になれば、それだけで映画に値する作品になるのに…、と考えていただけに、先にやられた…と感じざるを得なかった。リピーター(同じ作品を何度も鑑賞する人のこと)が続出するのも頷ける話である。

 そもそも、今、現実として過ごしているはずのこの現代そのものが、バーチャルリアリティ《仮想現実》であるという。何が現実で、何が悪夢であるのか…。その発想にも驚かされた。モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)の台詞、「Welcome to the real World《現実の世界へようこそ》」を聞いたとき、まるで、「ザ・ロック」にて、ショーン・コネリーが、「Welcome to the ROCK」と言い放った位に、渋さを感じた。何より、この作品の鑑賞後、なにか強くなった気がするというのも、仮想現実の一つの現れなのかもしれないと、素直にそう思った。「マトリックス」には、数学的に、「行列」を意味するという。しかし、この作品には、3次元の要素に、更に時間の概念を加えた、4次元の世界観がある。冒頭のトリニティの鶴のポーズのように、俳優は静止しているにも関わらず、視点だけが素早く回転する動きなどは、まさしくそうである。この視覚効果を「タイムスライス」といい、CMやプロモーションビデオでも多様されている技術である。

 主役を務めたキアヌ・リーブスは、「スピード」に次いで、今作も代表作の一つとして数えらることは間違いないだろう。今作は、「スピード」と「スロー」を巧みに表現した作品だけに、彼にとってのもう一つの「スピード」とも言えるだろう。一方、トリニティ役を演じた、キャリー=アン・モスも、今作を機に、飛躍することは間違いないだろう。鑑賞した男性はネオ役のキアヌ・リーブスを、女性はトリニティ役のキャリー=アン・モスに、さぞ憧れを感じたことだろう。そして、ローレンス・フィッシュバーンも、インパクト充分な役柄である。「イベント・ホライゾン」を鑑賞したときに、素晴らしい俳優だと関心したが(1997年度イカデミー主演男優賞を獲得)、この作品を鑑賞して、改めて、その演技力に感心した。本来のアカデミー賞受賞も、そう遠くはない話だと思った。そして悪役でありながら、異質な存在感を示したエージェント・スミス役のヒューゴ・ウィービングも味があった。

 早くも、続編を発表した「マトリックス」。2002年夏には、「マトリックス2」を、2002年クリスマスには、「マトリックス3」を、全米公開する予定であるらしい。2作目のジンクス(2作目は、概して1作目に比べてつまらない作品が多い)を打ち破ることはできるだろうか? 「スピード2」のようにはなってほしくないと、心から願うばかりである。

監督
 ウォシャウスキー兄弟

キャスト
 キアヌ・リーブス       ネオ
 ローレンス・フィッシュバーン モーフィアス
 キャリー=アン・モス     トリニティー
 ヒューゴ・ウィービング    エージェント・スミス
 グローリア・フォスター    予言者
 ジョー・パントリアーノ    サイファー
 マーカス・チョン       タンク
 ジュリアン・アラハンガ    エイポック
 マット・ドーラン       マウス
 ベリンダ・マクローリー    スウィッチ
 アンソニー・レイ・パーカー  ドーザー
 ポール・ゴダード       エージェント・ブラウン
 ロバート・テイラー      エージェント・ジョーンズ

参考
 ・株式会社インプレス MOVIE Watch
 ・「マトリックス」公式サイト
 ・「マトリックス」パンフレット