「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」 1999年/アメリカ/2時間12分49秒
自己評価ランキング C+

《ストーリー》
 遠い昔、はるかかなたの銀河系にて…。長い間、安定を誇っていた銀河共和国も、いつしかほころびが生じ、混乱の時代が始まろうとしていた。紛糾の元は、辺境の星系との交易ルートへの課税問題だった。強大かつ貪欲な通商連合は、実力でこの問題にかたをつけるべく、武装艦隊によって惑星ナブーを武力封鎖してしまった。しかし、即位して間もないナブーの若き女王アミダラは、連合の不当な要求を断乎として拒絶し、事態はさらに悪化する様相を呈していた。共和国議会は、この緊急時にも堂々めぐりの議論を繰り返すばかり。元老院最高議長バローラムは、この膠着状態を外交的手段で解決すべく、ひそかに、銀河の平和と正義の守護者であるジェダイの騎士、クワイ=ガン・ジンとその弟子オビ=ワン・ケノービの二人を派遣した。

 スターウォーズは、壮大なドラマである。22年前に、最初のスターウォーズが公開された。ルーク・スカイウォーカーが、ジェダイの騎士となって、邪悪な帝国を打倒するまでの3部作である。その過程において、ダース・ベイダーという、暗黒の騎士を打ち倒すことになるが、彼こそ、ルークの実の父、アナキン・スカイウォーカーである。今回、公開された「エピソード1」は、そのアナキン・スカイウォーカーの幼少から、暗黒面に転じていくところまでを描いた新3部作の第1弾である。ジョージ・ルーカスは、「ジェダイの復讐」の公開以後、今後のスターウォーズシリーズを作る上で、当時の技術力では表現できないことを理由に、活動を休止していた。しかし、現在のテクノロジーは目覚しい進歩を遂げ、特に、コンピュータ・グラフィックスの発達により、表現できないものは、殆ど無くなった。表現力に限界のなくなった今日、より、ストーリーと演技力の重要性が高まってきた。ただ華麗な映像を見せるだけでは、観客は満足しなくなってきたのだ。「ジェダイの復讐」から、16年。この日が訪れることを、ずっと待ちわびていた。しかし、自己評価ランキングは「C+」。何故、ここまで評価を下げることになったのか? それは、ストーリーに重厚性を感じられなかったことにある。どうも、交易ルートへの課税問題というプロローグが気に入らない。神秘さが感じられなかったのだ。スターウォーズには、厳かなテーマというのが似合っている。エピソード2、3と進むにつれ、その雰囲気を盛り上げていってもらえたら…、と願うばかりである。はっきりと言えば、スターウォーズの舞台に、政治は似合わない。

 ただし、音楽とコンピュータグラフィックスにおいては、さすがはスターウォーズである。あのメインテーマともいうべき音楽は、ジョン・ウィリアムズでないと、とても満足できるものではない。スターウォーズとILMの関係も、そうである。彼らとは切っても切れない縁であるというべきよりは、一心同体である。監督もジョージ・ルーカス以外にメガホンを取らせることは、想像することもできない。今後、順調に進めば、2002年にエピソード2、2005年にはエピソード3を公開する予定となっているので、この関係を持続させ、より伝説的なスターウォーズを描いてほしい。

 あと、旧3部作に登場していたキャラクターとの出会いも嬉しかった。オビ=ワン・ケノービ、アナキン・スカイウォーカー、C−3PO、R2−D2、ジャバ・ザ・ハット、後の銀河皇帝、そして、ヨーダ…。とても懐かしい顔ぶれである。なかでも、ユアン・マクレガーの演じる、オビ=ワン・ケノービと、ジェイク・ロイドの演じるアナキン・スカイウォーカーについては、まだ設定としても若すぎるので、旧3部作の彼らとは、同一人物としてはなかなか結びつかない。こればかりは、この後の進展を待つしかないだろう。この他、エピソード1で初登場のクワイ=ガン・ジンは、今作の主役的立場である。その役にリーアム・ニーソンを抜擢したのは正解である。彼は、「ネル」「レ・ミゼラブル」においても、好印象な演技を披露してくれた。ただ、アミダラ女王を演じるナタリー・ポートマンは、少々、役柄的にも難しかったのか、「レオン」で感じた、あのインパクトはなかった。そして、ダース・ベイダーに代わる悪役、ダース・モールも、外見的にはともかく、存在そのものとしてミステリアスに欠けた。やはり、ダース・ベイダーのあの存在感を超えるのは、難しいのであろうか…。

 最後に、全体を通して、興奮した個所は、残念ながら一つだけ。それは、ポッドレースである。ライトセーバーの戦いでも、宇宙のドッグファイトでもない。ライトセーバーの戦いについていえば、スピード感の物足りなさを指摘する。もちろん計算された攻撃パターンであることは分かる。ただ、ジェダイの騎士なのだから、人間業とは思えない何かを見せてほしい。ドッグファイトについては、緊張感という要素を盛り込めなかったところに問題があるのだと思う。かつて、「スターウォーズ」にて、デススターを破壊するラストシーンがあったことを思い返してほしい。あの興奮を味わいたかった。ポッドレースの存在自体も、もちろんスターウォーズの重要な物語の一部であることは、話全体の筋からみてもわかる。ただ、そこで盛り上がっても、肝心なシーンでテンションを下げてはいけない。今回、酷評になってしまったのは、スターウォーズファンとしての自分の望んでいた作品とのギャップにあった。これから、そのギャップを少しずつ埋めてもらえることを望みたい。

監督
 ジョージ・ルーカス

キャスト
 リーアム・ニーソン   クワイ=ガン・ジン役
 ユアン・マクレガー   オビ=ワン・ケノービ役
 ナタリー・ポートマン  女王アミダラ役
 ジェイク・ロイド    アナキン・スカイウォーカー役
 ペルニラ・アウグスト  シミ・スカイウォーカー役
 フランク・オズ     ヨーダ役
 イアン・マクダーミド  パルパティーン元老院議員役
 オリバー・F・デイビス シオ・ビブル役
 ヒュー・クオーシー   パナカ隊長役
 アーメド・ベスト    ジャー・ジャー・ビンクス役
 アンソニー・ダニエルス C−3PO役
 ケニー・ベイカー    R2−D2役
 テレンス・スタンプ   バローラム最高議長役

参考
 ・株式会社インプレス MOVIE Watch
 ・「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」公式サイト
 ・「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」パンフレット