F1 Grand Prix 第10戦 オーストリア

 F1グランプリ第10戦の舞台となるのは、オーストリアのA1リンクです。1周4.319キロメートルを71周します。総走行距離は、306.649キロメートルです。決勝戦当日は、気温・路面温度共に20度以下と、タイヤの負担も軽い、大変、涼しいレースコンディションとなりました。

 今回、ポールポジションを獲得したのは、第3戦のサンマリノ・グランプリ以来、7戦振りとなる、ミカ・ハッキネン。ミハエル・シューマッハーの独走体勢に待ったをかけます。一方のミハエル・シューマッハーは、4番手グリッド。今レースでは、なかなか、思い通りのセッティングが決まらず、予選順位を落としてしまいました。2番グリッドには、クルサード。3位にバリチェロ。BARホンダ勢では、6番手にゾンタ、7番手にヴィルヌーヴの順位となりました。

 今レースでは、誰もが、マクラーレン勢を追いかけるフェラーリ勢という図式を、予想していたことでしょう。ところが、スタート直後の1コーナーで、このレースの全てを決する事件が、早くも起こってしまいました。なんと、ゾンタが、ミハエル・シューマッハーの後に衝突し、一方、トゥルーリはバリチェロを、後から突いてしまうという、多重クラッシュが起こってしまったのです。すぐさま、セイフティーカーが出動し、サーキットは大混乱に陥ります。トップグループと中盤グループの衝突によって、先頭を走行するマクラーレンの2台はもちろんのこと、難を逃れた後方グループは、皮肉にも大躍進する結果となります。

 ミハエル・シューマッハーは、このアクシデントにより、1周する間もなく、リタイアしてしまいます。フェラーリは、何とかリタイアせずに済んだバリチェロに後を託します。マクラーレンは、この事故に、まったく巻き込まれなかったことから、磐石な走りを続け、後方グループの躍進により、レースは早くも大判狂わせ、大波乱となります。ハッキネン、クルサードの次に続くのは、いつもは、後方を定位置としてる、ペドロ・デ・ラ・ロサ。誰が、このレースで、彼が3位を走行すると予想したことでしょう。4位には、ミカ・サロと続きます。

 しかし、このせっかくのチャンスも、トラブルの前には為す術もありません。デ・ラ・ロサは、エンジントラブルにより、リタイアしてしまいます。ただ、今回のパフォーマンスは、他力本願なところがあったとはいえ、見事なものでした。この間に、バリチェロは、なんとか、マクラーレンに猛追し、3位へと浮上します。それでも、マクラーレン勢とは、32秒以上もの差があります。このままでは、仮に、クルサードがピットインし、27秒のタイムロスを喫したとしても、余裕でバリチェロの前に出られることになります。

 今回は、スタート直後のアクシデントに、インパクトを受けた分、中盤以降のレース展開には、平凡な印象を受けました。やはり、ミハエル・シューマッハーの存在が消えた分、レースの面白みが半減してしまったのは、否めません。この後、プロスト・プジョーのアレジとハイドフェルトが、チームメイト同士で衝突するなど、まったく意味のないアクシデントもありました。

 後半戦に入り、マクラーレンの2台は、3位のバリチェロとは、20秒以上のタイム差があることから、ペースを落とします。それでも、バリチェロは、前の2台に、まったく追いつけません。完璧なセッティングを施したマクラーレンと、思うようなセッティングを見出せなかったフェラーリ。前半戦のフェラーリの勢いは、一体、どこへ消えてしまったのかと、眼を疑うような光景でした。

 このまま、マクラーレンは、ワン・ツー・フィニッシュを決め、ミカ・ハッキネン自身も、ポール・トゥ・ウィンで、チェッカーフラッグを受けます。この混戦の中、健闘したのは、ホンダエンジンのヴィルヌーヴと英国のルーキー、バトンでした。ヴィルヌーヴは4位に入賞、バトンも5位に入賞を果たし、その存在をアピールしました。

 今回、シューマッハーは、リタイアにより、56ポイントとドライバーズポイントは変わらなかったことから、クルサードは50ポイント、ハッキネンも48ポイントと追い上げ、三つ巴の戦いとなってきました。次戦、F1グランプリ第11戦は、シューマッハー兄弟の母国、ドイツ・グランプリです。ミハエル・シューマッハーは、このラウンドで、優勝を取り逃がしてしまい、凱旋将軍にはなれなかったものの、母国グランプリで、是非、復讐を果たしてもらいたいところです。決勝戦は7月30日です。