F1 Grand Prix 第6戦 ヨーロッパ

 第6戦、ヨーロッパ・グランプリは、ドイツ、ニュルブルクリンク・サーキットで開催されました。今回、ポールポジションを獲得したのは、デビット・クルサード。数週間前には、飛行機事故で、奇跡の生還を遂げたばかり。しかも、肋骨3本損傷という厳しいハンディを乗り越え、1998年のカナダ・グランプリ以来のポールポジションの獲得に成功しました。そのフロントロウには、ミハエル・シューマッハー。彼の地元でもあるだけに、弟ラルフと共に、大勢のファンが詰めかけてきました。3番手には、ミカ・ハッキネン。ラルフ・シューマッハーは5番手。しかし、決勝当日は、雲行きの怪しい天候ということもあって、レースの決め手は、いかに天候を読み、いかに天候を味方につけるかにあります。標高620メートルに位置する、このサーキットは、もともと、不安定な天候であることが知られ、場合によっては、2番手以降にも、多くのチャンスがあるわけです。

 レーススタート、3番手のミカ・ハッキネンは、ロケットスタートを決め、デビット・クルサードとミハエル・シューマッハーの間を通りぬけ、一気に先頭に踊り出ます。ミハエル・シューマッハーも好スタートを決めたものの、デビット・クルサードを交わすのが精一杯。そのデビット・クルサードは、彼らの好スタートを阻むことが出来ず、3位に後退してしまいます。また、9番手からの発進となった、BARホンダのジャック・ヴィルヌーヴは、今回も、見事なスタートを決め、5位に浮上します。

 それから10周目、最終コーナー手前にある、ビードルシケインで、遂に、ミハエル・シューマッハーは、ミカ・ハッキネンを交わし、トップの座を自らの手で、もぎ取ります。ビードルシケインは、ニュルブルクリンク・サーキットの中でも、唯一ともいえる抜きどころで、ミハエル・シューマッハーは、ミカ・ハッキネンを交わすために、このビードルシケインを、オーバーテイクポイントとして狙っていたのは、間違いないようです。

 そして、この頃から、ポツポツと雨が降り始め、次第にコースは濡れ、カメラにも水滴が目立ってきます。15周目、ミハエル・シューマッハーと、約5秒遅れのミカ・ハッキネンは、同時にピットイン。今シーズン初となるレインタイヤを装着します。しかし、両者とも、タイヤ交換に手間取ってしまい、ミハエル・シューマッハーは12秒1、ミカ・ハッキネンは15秒8も掛かってしまいます。それでも何とか、ミハエル・シューマッハーは、先にレインタイヤの交換を終えた、デビット・クルサードの前に戻り、マクラーレン勢との差を広げていこうとします。

 デビット・クルサードは、雨のレースを苦手としているのか、それとも、雨天には向かないセッティングを施しているのか、パートナーのミカ・ハッキネンとは、毎周、約2秒も詰め寄られ、ついには、交わされてしまいます。しかし、ミハエル・シューマッハーとミカ・ハッキネンとの差は、15秒前後もあり、なかなか、その差を縮めることは出来ません。

 雨は、どんどんと激しさを増し、昨年に続いて、波乱に富んだレース展開となりました。1コーナーと2コーナーの間で、エディ・アーバインは、ヨス・フェルスタッペンを交わそうとして失敗し、互いのマシンを接触させた後、エディ・アーバインはスピンしてしまいます。その後をつけていたラルフ・シューマッハーは、そのアクシデントに巻き込まれ、アーバインとラルフ・シューマッハーは、リアウイングを衝突させてしまいます。結局、アーバイン、フェルスタッペン、ラルフ・シューマッハの3台は、29周目にてリタイアを喫します。

 レース中盤から後半に差し掛かるところ、ミハエル・シューマッハーは、2度目のタイヤ交換と給油をおこないます。この間に、ミカ・ハッキネンは、暫定ではあるものの、トップに返り咲き、その差を約25秒程度まで延ばします。しかし、ミカ・ハッキネンも、何れはタイヤ交換と燃料再給油をおこなわなければならず、その場合のロスタイムを考慮しますと、25秒のマージンでは、トップのまま、コースに復帰することは出来ません。少なくとも、この差を31秒〜32秒まで広げないと、シューマッハーに交わされてしまいます。ただ、このとき、ミカ・ハッキネンの前には、バックマーカー(周回遅れのマシン)が立ちふさがり、充分にペースを上げることは出来ず、結局、ハッキネンは、この差を広げられないまま、45周目にピットイン。ミハエル・シューマッハーは、その間に、トップの座を奪え返します。

 一旦は、差を縮めたミカ・ハッキネンでしたが、最終的に、その差は13秒に広がり、チェッカーフラッグを受けたのは、ミハエル・シューマッハー。今季通算4勝となりました。ミハエル・シューマッハーの獲得したポイントは46。ミカ・ハッキネンとの差は、18ポイント。全17戦中、3分の1のグランプリを終えたことになります。次回、第7戦、伝統あるモナコ・グランプリは、6月4日に決勝がおこなわれます。