F1 Grand Prix 第5戦 スペイン

 2000年F1グランプリ、第5戦スペイン・グランプリは、バルセロナの中心から、約20キロメートル北に位置するカタロニア・サーキットで開催されました。1991年以来、今年で開催10回目となるこのサーキットは、1周=4.766キロメートル。決勝では、64周で争われ、総走行距離は、309.663キロメートルになります。

 このサーキットは、風、気温、路面の温度に変化よって、大幅なセッティングの変更を余儀なくされ、大変、セットアップの難しいレースとされています。その中で、ポールポジションを獲得したのは、今シーズン初のポールシッターとなる、ミハエル・シューマッハー。続いて、ミカ・ハッキネンの順位。シューマッハーは、このスペイン・グランプリでは、開催された10回を全て完走しており、その内、8回は表彰台という、彼にとっては得意としているコースの一つです。しかし、1998年、1999年では、マクラーレンに優勝の座を奪われ、表彰台とはいえ、3位に甘んじる結果となってしまいました。

 今年は、マクラーレンと比べても、同等かそれ以上のパフォーマンスを発揮しているフェラーリ。ポールポジションのミハエル・シューマッハーは、見事なスタートを決め、トップの座を明渡すことなく、オープニングラップを制します。そのときには、2位のミカ・ハッキネンとは、既に1秒の差をつけていました。以降、ラルフ・シューマッハー、クルサード、バリチェロ、ヴィルヌーヴの順となります。

 一旦、約3秒まで、ハッキネンとの差を広げていたシューマッハーは、その後、タイヤのタレや、バックマーカーに引っ掛かるなどで、スピードは伸びず、あっという間に、ハッキネンにそのマージンを詰め寄られました。24周目、シューマッハーは、ピットイン。しかし、そのとき、まだ給油口からノズルを外しきっていないスタッフがいるにも関わらず、シューマッハーは、マシンを発進させてしまうという事故を起こし、この事故で、スタッフの一人は怪我を負ってしまいます。これが、後に、このレースの行く末を決定付けることになるとは、誰が予想したことでしょう。しかし、ミカ・ハッキネンは、その後、26周目にピットインし、7秒8で作業を終えたものの、シューマッハーの前に出ることは出来ません。一見、シューマッハー有利の状況で、レースは中盤を迎えます。

 そして、このレースの勝敗を決定付けることになった事件は、またしても、ピット作業で発生しました。それは、41周目、ミハエル・シューマッハーとミカ・ハッキネンの両者が、同時にピットインしたときのことです。シューマッハーは、先にピットインしたものの、ノズルが給油口に、はまらないというアクシデント。その間に、ハッキネンは、コースに復帰。シューマッハーのピットワークに、なんと17秒5も掛かってしまうのです。これは、普段、給油作業を受け持っているスタッフが、先の事故で怪我を負ってしまい、代理のスタッフに給油作業を任せたものの、やはり、その作業には不慣れだったのでしょう。このアクシデントの間に、ミカ・ハッキネンは、いっきにトップへと踊り出ます。シューマッハーとの差は、約10秒。

 その後、48周目、シューマッハーは、クルサードにも交わされてしまい、3位へと後退します。シューマッハーを除く上位陣は、1分25〜26秒で走行しているのにも関わらず、シューマッハーは、1分28秒という、他のマシンよりも2秒近く遅いペースだったのです。どうやら、2回目に交換した左フロントのタイヤに、スローパンクチャーの傾向があるようです。とうとう、4位を争っている、弟のラルフ・シューマッハーと、相方のルーベンス・バリチェロにも追いつかれ、ミハエル・シューマッハーは絶対絶命のピンチ。しかし、ここで、ミハエル・シューマッハーは、4位のラルフを抑え、代わりに、5位のバリチェロに道を譲り、バリチェロを、3位に浮上させたのです。ミハエル・シューマッハーは、弟にではなく、チームメイトに、3位の座を明渡したということです。

 ミハエル・シューマッハーは、自分の役割を果たした後、緊急ピットイン。直ぐにタイヤを交換します。さらに、このピットインによるタイムロスで、5位へと順位を落とし、表彰台は遠ざかっていきます。

 そして、ミカ・ハッキネンは、チェッカーフラッグを受け、1998年、1999年に引続き、3年連続、スペイン・グランプリを制しました。イギリス・グランプリに続き、マクラーレンは、2戦連続のワンツー・フィニッシュとなり、フェラーリとの差を、じわりじわりと追い詰めることに成功しました。ドライバーズ・ポイントでは、ミハエル・シューマッハー36ポイント、ハッキネン22ポイント、クルサード20ポイント、バリチェロ13ポイント。コンストラクターズ・ポイントでは、フェラーリ49ポイント、マクラーレン42ポイント、ウィリアムズ15ポイント。

 1998年のイタリア・グランプリ以来、シューマッハーは、ポールトゥウィンでの優勝はありません。つまり、逆にいいますと、ポールポジションを取ると、優勝出来ないという図式に、今回も当てはまってしまったわけです。次戦では、なんとか、そのジンクスを打ち破り、完全無欠な走りを見せてもらいたいと思います。次戦、ヨーロッパ・グランプリは、5月21日、ドイツ、ニュルブルクリンク・サーキットで、決勝がおこなわます。