F1 Grand Prix 第2戦 ブラジル
第2戦、ブラジル・グランプリは、サンパウロ郊外、インテルラゴスのホセ・カルロス・パーチェ・サーキットで行われました。F1グランプリ全17戦において、反時計回りに周回するのは、サンマリノ・グランプリのイモラ・サーキットと、ここ、インテルラゴスだけです。特に、インテルラゴスは、バンピーな(でこぼこした)路面として知られ、アップダウン(上り下り)の激しいコースでもあるので、セットアップにも苦しめられ、予選では、赤旗による中断3回、朝のウォーミングアップでも、赤旗中断2回という、波乱尽くめの決勝を迎えることになりました。これでも、今年は、開催に向けて、全体的に路面を舗装しなおしているので、タイヤのグリップ力はあがっているそうです。1周4.309キロメートルを71周、総走行距離305.939キロメートルになります。
決勝戦、スターティンググリッドについたのは、20台。なんと、ザウバーの2台は、決勝戦の出走を見送ったのです。先程も説明致しましたとおり、このサーキットは、大変、バンピーな路面であり、いくら舗装しなおしたといっても、ホームストレートの歪んだ路面を、完全に歪正することは出来ません。その影響によって、ザウバーのマシンの2台は、リアウイングを脱落させてしまうというアクシデントが発生。レース中は、原因を特定できなかったことから、安全を考えて、決勝戦を辞退することになったのです。
スタートでは、ちょっとしたマシントラブルによって、クルサードは出遅れ、シューマッハは、その隙をついて2位に浮上。しかし、その勢いは留まるところを知らず、2周目のホームストレートエンドでは、トップを走るハッキネンを交わし、あっという間に、先頭へ踊り出ます。シューマッハーのチームメイトで、地元出身のルーベンス・バリチェロも、クルサードを抜き、3番手に。ハッキネンを射程圏内に定めます。
シューマッハーに交わされたハッキネンは、シューマッハーを追いかけるどころか、毎ラップ、1秒以上の差をつけられ、どんどんと引き離されていきます。どうやら、ハッキネンは、燃料給油・タイヤ交換を1回のみおこなう“ワンストップ”作戦を立てているのに対し、シューマッハーは、それを2回おこなう“ツーストップ”作戦で、決勝に臨んでいるようです。そうなると、スタート時における、最初の燃料積載量では、ツーストップ作戦の方が、少なく済みます。積載量が少なければ、それだけ、全体重量も軽くなり、加速面、ブレーキング面において、有利に働いてくるわけです。もちろん、ピットストップすることによって、1回あたり、30秒近くのタイムロスを喫します。しかし、シューマッハーの快走によって、ハッキネンとの差を確実に広げ、この作戦は、大当たりしていくことになったのです。
一方、地元出身のバリチェロは、観客の期待を集める中、15周目にして、とうとう、ハッキネンを交わすことに成功します。場所は、先程のシューマッハーと同じ、ホームストレートエンド。7万人の観客は、大歓声をあげ、テレビでも、それが伝わってきました。スターティンググリッドでは、マクラーレンの1・2体勢を覆すことは出来なかったものの、決勝戦では、その立場は逆転。ましてや、スタートの位置ではなく、レース結果によって全てが決まるだけに、マクラーレンにとっては、悔しい思いであったに違いありません。
その後、ホンダエンジンを搭載したマシンに乗り込んでいる、ジャック・ヴィルヌーヴは、オーストラリア・グランプリでは、入賞を果たしたものの、今回は、メカニカルトラブルにより、リタイヤしてしまいます。エンジントラブルではないとはいえ、ホンダファンには、がっかりな結末となりました。
20周目、シューマッハーは、1回目のピットストップを実行に移します。タイムは、10秒1。どうやら、給油量から考えますと、次にピットインするのは、50周目になりそうです。このサーキットは、71周しなければならないので、単純に2回ピットインすることになりますと、23〜24周に1回、ピットインしなければなりません。もし、この次も、23周前後に、燃料再給油するのであれば、今回の給油の時間は、もう少し、短いはずです。どうやら、次は、もうすこし長めに走り、最後は、また少ない燃料で、走りきるという、変則的なピットストップ作戦に出たようです。
シューマッハーの1回目のピットストップの後、バリチェロもツーストップ作戦を進める為、ピットインしてきます。タイムは、10秒7。しかし、残念なことに、その数周後、エンジントラブルにより、リタイヤしてしまいます。地元ファンからは、大きなため息が漏れたことでしょう。アイルトン・セナ亡き今、ブラジルのF1ドライバーとして、期待を寄せられているだけに、来年、21世紀初のブラジル・グランプリでは、是非とも、母国での優勝を飾ってもらいたいところです。
そして、レース中盤、オーストラリア・グランプリでの悲劇はまたしても、ハッキネンに襲いかかってきます。なんと、またしても、トラブルにより、完走することなく、マシンを止めなければならなくなったのです。これで、2戦連続のリタイア。まだ、1ポイントも獲得していないハッキネンとしては、怒りと悲しみを交錯させていることでしょう。次戦、サンマリノ・グランプリでは、少しでもシューマッハーとの差を詰めておかないと、一度、開けた穴を埋めるのに、かなりの苦労を強いられることでしょう。
宿敵、ハッキネンが消え、シューマッハーの走りに、余裕も出てきました。続く、2度目のピットストップは、51周目におこなわれ、7秒7。それでも、2位を走るクルサードは、その間に、シューマッハーを交わすことが出来ません。
レース終盤、シューマッハーは、ちょっとしたトラブルの発生により、ペースを落とした為、クルサードとの差は徐々に縮まってきました。最初、16秒あったマージンは、6秒までに縮まったものの、それでも、余裕でチェッカーフラッグを受けました。F1デビュー以来、ブラジル・グランプリでのリタイヤはなく、1997年の5位入賞以外は、全て表彰台で、レースを終えているシューマッハーは、今回もそのジンクスを守り貫きました。また、なんとか、2位表彰台を獲得したクルサードは、マクラーレンに6ポイントを献上したのですが、その後の車検で、フロントウイングの規定違反と判断され、その成績を抹消されてしまうという、アクシデントに遭います。マクラーレンは、その発表を不服とし、提訴しました。果たして、その結末はどうなることやら…。次戦、サンマリノ・グランプリは、4月9日に決勝戦を迎えますが、それまでには、判決が下されるようです。