026「風呂はお湯だけでなく、アイデアも湧かす」
何も風呂はお湯を湧かすだけのものではない。アイデアは風呂に浸かっているとき、シャワーを浴びているときの、このリラックスした状態に生まれやすい。
それに比べ、車の運転中は他のことを考えるには危険だし、寝る前や起きた瞬間は、頭が活発な状態になっていないので、同じリラックスでもアイデアの思い浮かびやすさが違うように思われる。
風呂とトイレでは、風呂に入っている時間の方が長いわけで、その分リラックスしている時間も長く、アイデアもそれだけ湧きやすい。ただし風呂に入ったからといって、「何か思い浮かばないかな」と意識するのはあまりよくない。それはリラックスした状態ではないのだ。自ら栓を抜く行為だけは避けたい。
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山種証券の2代目社長、山崎富治氏は、ある晩風呂につかっていたおりに、報告・連絡・相談、いわゆる「ほうれんそう」という言葉を思いついたとされている。
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【文章を書くヒント】や【発想のトリック】(樺旦純:著、PHP研究所)には、アルキメデスが入浴中に大発見をして、「ユリーカ!(われ発見せり)」と叫び、裸で飛び出したという伝説を紹介している。このことから、リラックスした時に、よきアイデアの浮かぶことを、「ユリーカ体験」と呼ぶようになったという。
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【本を書こうよ!】(舛井一仁・小石雄一:著、同文書院)の中で小石雄一氏は、「私などは、朝風呂の中で色々な発想が湧くのでそれを書きとめている。どこで、テーマを拾うかは人それぞれだが、リラックスした頭の中に湧いていることだけは確かのようだ」と語っている。
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「ゲームやギャンブルは、人を心からリラックスさせることはありません。リラックスはもっと個人的な静かな営為の中にあるのです」と、【マーフィー名言集】にある。仮にゲームやギャンブルで、ストレスゼロ状態になったとしても、けして、「リラックスした」というわけではないので、取り違えることのないようにしたい。このことは、【発想のトリック】の中でも、同様に指摘されている。
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ここでは、リラックスをすることで、思いがけない発想が訪れることを説いたが、思考心理学者であるかんば樺わたる旦純氏は、【発想のトリック】の中で、一つの注意を促している。それは、リラックスをする前に、あれこれと集中して考えるという過程が必要であるということだ。事前にそういった考える動作もなしに、リラックスしていてひらめきが訪れるならば、科学者も発明家も芸術家も、みな毎日、ぐうたらとしていられるはずである。従って、多くの情報を詰め込み、そして熟考した後にリラックスすることが、着想の効果を高める秘訣であるといえる。