020「問い合わせをするときの注意」
よくコンピュータに携わっていると、ふとしたことで、壁にぶちあたったりトラブルに遭遇してしまい、専門の部署や企業などのヘルプデスクに問い合わせすることがある。それは一向に構わないのであるが、ただ、そのときに目的を明確にしない人がいる。
その結果、問い合わせ先に、「なにかいい方法はないのだろうか?」と、肝心な目的を告げずに、目先の問題を解決する為の手段を聞き出そうとするのである。いわゆる「木を見て森を見ず」というやり方である。
確かに、その質問に対して、問題を解決する為の方法を、相手は教えてくれるかもしれない。しかし、目的を実現する為の最善の方法までは教えてくれない。
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問い合わせをするときは、まず目的を明確にして、ついで自分のとった手法を説明する。何をしたいがために、どういう手法を用いてうまくいかないのかを説明すれば、問い合わせを受け持った人は、恐らく根本的に別の手段を説明してくれることだろう。
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ただ、ある同僚は、すぐに最善の方法を得られることが、必ずしも真であるとは限らないことを指摘している。その同僚の反論は以下の通りである。「その人にとっては、たとえ時間がかかっても、いつかは、隣りの木が見え、また隣りの木が見え、やっと森が見えてくるその過程が重要になるかもしれない」
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西洋のことわざに、「目的は手段を正統化する」という言葉があり、これは少々手段がまずくても、目的さえ正しければ、その手段のまずさは帳消しになるという意味を表しているが、これはあくまで多くの手段と意見を検討した結果、いい方法が思いつかなかったときの最終手段であるということを、肝に命じておきたい。
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「お金は手段であり目的ではありません。お金を得ることは、幸福と平和と愛を実現するために必要な小道具であって、それはあくまで目的を達するための手段にすぎません。目的に手段をはき違えてはいけません」と、【続・マーフィー名言集】(ジョセフ・マーフィー:著、しまずこういち:編、産能大学出版部)にあるが、問い合わせについても同じことがいえる。
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【「考える力」をつける本】からも2点抜粋してみた。「南カリフォルニア大学の誇りである、数学者リチャード・ベルマン教授は、いつも学生に、「良い問いは答えより重要だ」と教えたという」「設問は、できる限り具体的に絞り込むことだ。自分自身の記憶に対する問いかけであろうと、他の人に問いかける場合であろうと、同じ。人に何か教えてもらおうとして質問をしても、答えてもらえない。そこで、質問の方向、方法をちょっとかえてみる。すると、相手は、「なんだ、そのことだったのか、それならそうと、最初からそう聞いてくれればいいのに」。パッと顔を輝かせて、しっかりと答えてくれる」
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【心にのこる言葉】(小野寺健:著、河出書房新社)では、「むずかしいことを尋ねるのはやさしい」という、イギリスの詩人オーデンの警句を紹介しているが、なんと簡潔で皮肉な言葉であろう。この言葉の意味を噛みしめながら、過去を回顧すると、赤面の至りである。